田上 明日香さん - 日本産業ストレス学会-産業ストレス/メンタルヘルス情報発信

コロナ禍の産業保健活動の実際と展開のヒント

宗像 かほりさん

田上 明日香さん Tanoue Asuka

SOMPOヘルスサポート株式会社
シニア産業保健メンタルヘルス・コーディネーター  
臨床心理士、公認心理師

オンライン面談でのコミュニケーションを工夫

オンラインコミュニケーションの課題と面談の質を高めるための情報収集のコツ

―労働者のストレスを下げるために、これまで工夫や配慮をしたことや、試行錯誤を続けていることがありましたら、教えてください。
 コロナ禍となり会議などもオンラインと対面が混在するようになりました。オンラインは便利ですが、会議後の非公式な話し合いや情報交換が少なくなってしまいます。入社間もない、対人関係をこれから作っていく立場にある従業員の方などからは、相手がカメラオフの場合、自分が余計なことを言っていないか等勘ぐってしまったり、考えすぎてしまったりすることで、ストレスを感じるという声もきかれました。また、オンラインでの仕事では「自分でやらなければ」という意識が強くなりすぎて、仕事を終わらせられない、切り替えられない等の負担が増えている場合もあります。こうした傾向をふまえて、サインを見逃さないように注意しています。

休職中の従業員のオンライン面談などでは、対面に比べて把握できる情報が減ることを補うために、長時間労働者への医師面接指導の質問項目等を参考に、事前に体調面や働き方、疲労度合い等を事前に回答いただき、情報を把握してから対応するようにしています。

そのほか、在宅中心の働き方をしている従業員のオンライン面談では、どのように過ごされているか、在宅勤務の環境面を把握するようにつとめ、ワーク・イン・ライフという新たな適応課題を乗り越えられるようにサポートしています。

一方で、オンライン・コミュニケーションだからこそ垣間見える変化(発言の回数やカメラオフ等)もあります。それらに気づき、個別にフォローすることの重要性を感じています。例えば、カメラオンにしていた人が、カメラオフの頻度が多くなることがあります。こうした変化は、カメラオフが定着してしまってからでは、そのわけを尋ねたり指摘したりしにくくなってしまうこともあります。そのため、管理職が、部下の変化に気づいたときは個別にアプローチして困っていることがないか確認することをおすすめしています。自然と気づくのは難しいので、変化に気づこうとしてみてください、とお伝えしています。

自律的なキャリア形成や適応支援、よりよい組織づくりのための組織支援へ

ー今後、進めていきたいと考えている活動がありましたらぜひ教えてください。
 多様な従業員を、モチベーションも含めてどのように束ねていくかが経営課題となり、パーパス経営等が話題になっていますが、このような環境変化に対応するためには、従業員側の意識の変化も丁寧に支えていく必要があり、適応のサポートをすることが益々必要になっていくと感じています。会社の方針・方向性を一人一人に根付かせていくよう、管理職等への伴走型のサポートも必要です。これからは、メンタルヘルス不調だけでなく、そうしたサポートも求められていきます。本人がどうありたいかがこれまで以上に意識されるようになっていくと、会社とのすり合わせも必要になってきます。自律的にキャリア形成をしつつ、会社の中で安心して仕事ができるように、様々な観点から、個人と会社と全体の適応支援を行っていきたいです。また、集団対応においても、課題のある集団だけでなく、よりよい組織づくりのための組織支援も進めていきたいと考えています。

 

オンライン会議でのコミュニケーションの最初と最後の時間を意識

ー他事業所でも取り組めそうなお勧めの取り組みがあれば教えてください。
 オンライン会議などのコミュニケーションでは、面談の最初の時間を少し使って、アイスブレイクとして別の話を取り入れて、安心して話をしやすい環境づくりをする工夫は大切だと思っています。

また、試行錯誤を続けていることとして、オンライン会議がスパッと終わることで、対面であれば会議後に移動しながらなどの会話で補われていたことが未消化で残ることもあるので、チャットや短い個別のオンライン会議など、効率的な仕組みを有効活用するための工夫の必要性を感じています。

(2021年12月下旬、聞き手:小林由佳、田村三太)

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