木内麻由子さん - 日本産業ストレス学会-産業ストレス/メンタルヘルス情報発信

インタビュー

木内麻由子さん

木内麻由子さんKiuchi Mayuko

EAP機関 精神保健福祉士

EAPからのメッセージとEAP機関としての工夫

不安への対処とコミュニケーションの重要性

1) 従業員ご本人の相談傾向
 「感染しているか不安」、「微熱がたまに出て不安も大きい」「感染するのが怖い」という従業員の相談もあり、様々な相談のベースに不安が増している状況を感じました。個別のケース対応に関しては、微熱などの症状対処のために内科受診を勧めるのか、従来のように精神科にリファーすべきか、経過フォローして判断すべきか、アセスメントが難しいこともありました。提携先の精神科クリニックの医師に相談して判断することもありました。

 従業員や企業によって、感染対策やリスクに対する認識が大きく異なる状況も感じ、個々の従業員や企業に合った個別の支援を行うことが重要であると感じています。

2) ストレス対処のための従業員への情報提供  
 契約企業向けのセルフケアリーフレットに、「①感染拡大によって誰でも起こりうる心理的変化、②在宅ワーク・外出自粛時でのケア」などについても追記し配布しています。

3) 管理職のマネジメントの難しさと対処
 個々の在宅ワークの環境は見えにくく、コミュニケーションをとりづらいので、業務が停滞することもあるように感じます。したがって、在宅ワークは今まで以上に積極的なコミュニケーションをとることによって、社員間のつながりを維持することが重要であると感じます。とくに、管理職によるつながりへの働きかけ、つながりのきっかけづくりが重要と考えます。
 管理職は、従来の部下の性格や能力、技術格差を考慮したマネジメントに加えて、業務の個別性(守秘義務の取り扱いなど)や在宅ワーク中の環境も考慮に入れ、個々の状況を確認しながらサポートを行い、パフォーマンスをあげていくことが重要であると感じました。

4) 復職支援のサポート
 生活習慣記録票などをメールで送信してもらい、電話で状況を確認したりします。感染予防のため極力電話相談やメール相談の利用を促していますが、職場復帰が近づいている場合や面談の方が望ましいケースなどは、感染予防対策をとった上での30分以内の来所相談を実施しています。

5) 教育研修の提供工夫
 研修の中で実施する予定であったグループワークの代わりに、講義を増やしたりセルフワークの時間をとるなど工夫しています。今後の研修として、参加者を各部屋数名として、講師は別の部屋から遠隔講義を行う研修を検討しています。

EAP機関としての工夫

1) スタッフ間の関係維持
 弊社では、一時交代勤務を行っていました。その中で週1のっ会議を、テレワークスタッフも交えた遠隔会議として継続し、「担当業務の進み具合」、「仕事を抱え込んでいないか」などを情報共有したうえで、業務の進行状況や仕事が進まずストレスをためていないかなどを把握し、良い方法を共有するなどパフォーマンスをあげるための工夫を検討していました。

2) 遠隔面談の工夫と課題
 従来行っていた派遣カウンセリングや産業医面談は、テレワーク中の従業員を含めて遠隔面談を活用しています。契約企業担当者との情報共有についても、遠隔面談や電話を利用しています。

3) セキュリティの確保
 情報セキュリティマネジメントシステムのルールに則って取り組んでおり、EAPスタッフの自宅OA機器利用や自宅への業務持ち出し、ソフトのインストール等は専門部署で審査の上実施しています。私用PC・携帯等を利用しての個別相談対応はセキュリティの関係からも実施はしていません。

4) 今後の展開
 企業の担当者の状況を把握して、困りごとの解決を一緒に考えていきたいと考えています。また、弊社としては、オンラインサービスの提供、研修ビデオの配信、オンライン研修等を積極的に開発し、早期の提供を目指しています。


(取材日:2020年5月18日、聞き手:桃山学院教育大学 栗岡 住子)

Copyright © 日本産業ストレス学会 All Rights Reserved.